研究概要 |
研究開始当初設定した研究計画では,以下のような段階に従って作業を行う予定であった。 1.具体的研究対象(事業体)の選定 2.当該事業体の経営分析と効率上の問題点の同定 3.当該事業体の当該国の経済社会的状況における位置付け 4.当該事業体の形成・発展に関わる歴史的分析 5.当該事業体の構造的非効率の要因に関する仮説の提示 「研究発表」のところで掲げる論文等を執筆しながら,途中経過をなるべく記述し,公表するように心がけながら,研究を進めてきた。上記の目的1.に関しては,ケニアの医療保健セクター,行政サービス,穀物の流通,ザンビアの上水道供給などの事業体を具体的対象として選定して,それぞれの概要の分析を行った。3.については,その分析の前提となるケニア,ザンビアの構造調整政策の歴史的経緯・実施状況・問題点に関する考察はほぼ終えており,雑誌等に発表している。また,2.と4.についても既に作業を開始しており,この研究課題への補助金は平成8年度に継続されているので,さらに研究を深め,最終的に5.についてまとめ,発表する予定である。 現在までの研究を通じ,ケニア,ザンビア等の最貧国における構造調整が経済安定化政策と並行して進められることは非常な困難を伴うこと,構造調整の成功のためにはミクロ・レベルの政府・公益事業体部門の合理化が不可欠であること,政府・公益事業体部門の効率性には人的資源や能力主義的人事管理などの内在的な要因が大きく関わっていること,などが実体に即した新しい知見として得られた。この課題については先行する研究がほとんどなく,今般の研究の意義は大変大きいものと考える。
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