1980年代の終わり以降日本の自動車企業の職場にはめざましい変化が起こりつつある。企業組織のハイアラーキ-のフラット化、組織の柔軟化、賃金システムにおける能力主義の導入、終身雇用制から雇用形態の多様化、そして職場環境の変化である。この職場環境の変化には、ライン設計の変化、作業環境、労働条件、エルゴノミクスの改善、自動化、そして作葉組織再編がある。これらについて日本の先端自動車工場、既存工場を、各企業の個性に留意レつつ実態調査を行っている。その一部は既に成果を公刊した。とくに作業組織改善は、トヨタ自動車において、「完結工程化」の名の下にめざましい展開を見せている。これは、機能という観点から見た文脈上の意味を重視して、工程の再編成と作業の再編成を行うものである。すなわち、作業者の行う作業について、作業の細分化をこれ以上行わない、そレて一人の作業者が自己のサイクルタイムのうちに行う一つ一つのタスクの間の意味連関を出来るだけ回復レようとするもである。さらに生物物ができあがる生産工程と、生産物が次第に加工される時間的順序を一致させる。そして究極的には、生産か過程と、労働過程を一致させる方向をめざすのである。こうした試みは、ティラーリズムの構想と実行の分離を克服し、ひいては、これは、近代以降の工業化の歴史における労働細分化、即ち分業の進化が即ち生産力の発展であるという通説の再検討を促す重大な理論的内容を含むものと思われる。
|