本研究は、日本自動車産業をとりあげ、その海外進出が地域経済に与える影響を分析しようとするものである。本年度は、国内市場で販売不振気味の日産自動車、三菱自動車の主要工場所在地を中心に地域経済の空洞化に関する現地調査を行なった(昨年度はトヨタ自動車、本田技研工業)。 それと平行して、日本自動車工業会、機械振興協会において資料収集を行った。 *日産自動車関連=座間工場、横浜工場、横須賀工場、栃木工場、苅田工場、下請企業(池田金属工業)、神奈川県庁、座間市、座間商工会議所、上三川商工会、上三川町、横浜市、横浜商工会議所、横須賀商工会議所、苅田町、苅田商工会等においてヒヤリングを行った。 *三菱自動車関連=水島製作所、下請企業(イ-・ダブリュ・アイ株式会社、ウイング・バレィ協同組合)、倉敷市、倉敷商工会議所においてヒヤリング、資料収集を行った。 今年度調査において以下の点が明らかになった。 (1)地域経済の空洞化を短期間に外形的に観察することは難しく、また雇用、人工統計、地域産出量統計などを除けば、定量的に空洞化を実証できる資料を得ることはきわめて困難である。とくに座間市、上三川町、苅田町のように、親工場はあっても下請企業が地元に形成されていない地域では、目立った空洞化は現れてこない。(2)とくにバブル崩壊以後の不況による自動車販売の伸び悩みによる影響と自動車企業の海外進出に起因する影響とを識別することは難しい。(3)地域経済の反空洞化政策は、県レベルでは意識されているが、市、町レベルでは考えられていない。しかし地域経済の将来に関する不安はいずれの工場所在地でも大きい。(4)本社には雇用維持という意識はきわめて強い。
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