研究概要 |
1,本研究は、日本自動車産業をとりあげ、その海外進出が工場所在地域に与える影響を地域経済の空洞化という視点から分析しようとするものである。 2,本年度は、最終年度であり、初年度調査した愛知県豊田市などのいくつかの再調査を含め、福岡県宮田町、福岡県苅田町、静岡県冨士市、京都市、滋賀県竜王町、群馬県太田市、広島市など主要工場所在地を中心に地域経済の空洞化に関する現地調査を行なった。それと平行して、日本自動車工業会等で資料収集を行った。 3,今年度調査において以下の点が明らかになった。 (1)地域経済の空洞化を短期間に外形的に観察することは難しい。また雇用、人口統計、地域産出量統計などを除けば、定量的に地域経済の空洞化を実証できる資料を得ることはきわめて困難である。 (2)とくに親工場はあっても下請企業が地元に形成されていない宮田町、太田市、竜王町、富士市のような地域では、目立った地域経済の空洞化は現れてこない。 (3)関東地域の工場では、部品・素材の調達は、関東全域から行っており、親工場と下請工場との関連は地域的閉鎖性を持っていない。したがって地域経済の空洞化は希釈されている。 (4)とくにバブル崩壊以後の不況による自動車販売の伸び悩みによる影響と自動車企業の海外進出に起因する影響とを識別することは難しい。 (5)地域経済の反空洞化政策は、県レベルでは意識されているが、市、町レベルでは考えられていない。しかし地域経済の将来に関する不安はいずれの工場所在地でも大きい。 自動車企業本社では雇用維持という意識が強く、このことが地域経済空洞化の防止策に役立っている。
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