発展途上諸国における統計資料は不完全かつ不十分である。1975年に独立したパプア・ニューギニアの場合も例外ではない。パプア・ニューギニア共和国はニューギニア島の東半分を占める国であるが、ニューギニア島の住民は世界で最も遅れて西洋諸国の文明と接触したといわれている。そのため、現在でも、ニューギニア固有の社会経済構造、文化等が広範に存在し、伝統社会の典型をなしており、文化人類学、社会学、民族・民俗学の研究の対象となっている。筆者は経済学の立場から、パプアニューギニアの経済社会構造の変容過程について研究を進めている。当該研究期間中には、国勢調査(センサス)結果にもとづいて人口構成、人口移動、賃金、市場(貨幣)経済の発展、輸出入の推移等、実態経済の把握に努めることにした。統計分析の結果によると、パプア・ニューギニアでも、政府の積極的な近代化政策によって、伝統社会の構造が崩れ農村から都市部へ人口流出が続き、新たな問題を生み出しつつあることが明らかにされた。
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