平成7年度における研究では、第1にNAFTAにおける環境問題に関する先行研究をトレースした。その結果、NAFTAにおける環境問題では、(1)メキシコへの企業立地移動の評価、(2)メキシコの経済成長による環境保護技術・設備の拡充の見通し、(3)北米3ヵ国の環境保護行政の国際的協力の実効性、などが主要な論点であることが明らかになった。第2に、NAFTAの本協定および「環境協力に関する北米協定」に基づき、NAFTAにおける北米3ヵ国の環境行政の特質を検討した。この作業をつうじて、貿易・投資の自由化と環境問題とのリンケージおよびNAFTAの環境行政の特質がいっそう具体的に理解できた点はきわめて有益であった。マラケッシュ協定で明らかにされた「持続可能な発展」や「地球資源の最適な利用」と両立する貿易・投資の自由化を考えるうえでも、本研究は示唆に富む研究だと確信する。 また、国境をまたぐ環境問題および環境行政の現状についてもっと具体的に把握する必要を感じている。たとえば、環境保全行政をめぐっては、メキシコの外貨獲得の一大セクターであるマキラド-ラを抱えながら税収ならびに財政配分が追い付かない北米国境地帯の諸州と、マキラド-ラ型工業化を進めようとする中央政府との間で財政配分問題について対立があり、この点についてアジアの輸出加工区のケースとの比較が必要だと考えている。
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