1.各国における規制緩和政策の多様性とその背景となる要因の摘出 (1)わが国における政策決定・運営システムが、閉鎖性、裁量性等の特徴をもつのは、所管官庁、関連業界、族議員間の継続的は相互作用によって情報を共有する関係特殊的資産を形成することによる。さらにこのシステムは、中選挙区制からなる政治システムと、相対的に優位性をもつ官僚制、長期継続的な取引関係からなる日本型生産システムと相互補完の関係にあり、安定的な均衡を生じている。規制緩和は制度変化ではあるが、わが国の政策決定・運営システムにのったうえで、関係特殊的資産を維持したままの形態で実施されるため、裁量性と閉鎖性という特徴を存続させる。 (2)アメリカ、イギリスにおける電気通信規制緩和政策とわが国の電気通信規制政策が異なる経路をたどってきたのは、規制主体の差異(官庁、司法、独立の規制機関)、当該産業の競争状況、国内における生産・交換システムの特徴、規制緩和が行われた時点における技術的知見、規制緩和の相対的スピード等による。 (3)規制緩和の進展情況は、国ごと、産業ごとに跛行性がみられるが、「経路依存性」に着目する本研究は継時的な立場にたった国際比較研究であるが、特定時点における国際比較も何らかの形で研究に組み込むべきだと考えている。対象国、対象産業を拡げていく中でこの問題を検討したい。
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