1.各国における規制緩和政策の共通性 (1)産業分野ごとに各国における規制緩和政策の内容と特徴を検討すると、そこに同質性と多様性を見出すことができる。 (2)規制緩和政策が1980年代以来各国において共通して行われてきたのは、技術革新によって従来の自然独占産業の前提条件が外れてきたこと、自然独占産業に対する規制政策が「政治の失敗」によって好ましい成果を上げないという規制理論の新展開と、コンテスタブル・マーケット論に代表される市場競争の有効性を拡張する経済理論が展開されたこと、経営が困難になった国営企業を民営化することによって、低成長競争における財政赤字の増大をくい止める効果があることに政権担当者が注目したこと、経済活動のグローバル化によって各国における規制政策の差異が各国の経済成果に大きな影響をあたえることなどによる。 (3)特に、一国内における特定産業に対する規制ないし保護によって生じるレントを他産業が負担せざるを得ない状態にあれば、経済活動のグローバル化を通じて他産業の競争条件を脅かすことになり規制緩和が政治問題化する。この経路をたどることによって、各国は独自の産業政策を遂行することが従来よりも困難になる。 2.制度間競争を通じた規制緩和政策の多様性 (1)各国における制度の差異が一国全体に経済成果の差異を生じることから、財政再建、経済成長といった争点において政治的競争における革新者が規制政策の変更をめぐる国内の政治的競争に加わる。 (2)各国が行う規制緩和政策が経済活動の国際的な連結のもとで、他国の経済成果に影響を及ぼすことから、経済成果の国内への確保を目指した国際間の制度間競争が生じる。 (3)しかし、制度間競争は各国の規制緩和政策が同一の制度に収斂することを意味するものではなく、産業の国際的連関性、政治構造、行政における集権・分離制にも依存する。
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