日中合作企業は、東アジアにおける新しい共同体の創出であると考える。 この考え方のもとに、実態調査の調査設計のため中国側の経営指導層の面接を行った。今回の上海浦東地区における日中合作企業の実態調査は、この新しい共同体の合併動機、リスク観、重点管理分野、経営組織行動、賃金制度、労働時間と休暇、人事管理事項、福利厚生のそれぞれの実施状態についての評価観を全体的に把握することが重要であると認識した。そしてこのことを調査票にもりこみ、調査分析を実施した。さらに踏み込んだ調査分析として、日中合作企業のパターンを中国側、日本側の資本持ち分比率を50%:50%、中国側が50%以上、日本側が50%以上の3っつに区分した。これらの区別、それぞれにおける共同体意識をリスク観、重点管理、経営組織行動における評価観、賃金制度、労働時間と休暇、人事管理事項、福利厚生のそれぞれの実施状態を中心にして、データから、このパターン別に差があるかどうかの調査分析を試みた。その結果、日本側の資本持ち分比率が大きいほど日本独自の共同体意識が強く、中国側持ち分比率が強い場合は、組織行動においては中国側の考えが反映し、中国側の弱点である技術部門では、日本からの技術移転や技術管理を迎えようとする傾向が強い。資本持ち分比率が中国側、日本側で50%:50%の場合には、上記の二つのような明快な傾向は見られず、今後の動向が点検されねばならない。これらの結果を踏まえて、2、3の日中合作企業の戦略行動を面接調査し、個別の共同体の実状を把握した。
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