1.高齢者介護福祉システムの財源としては、地方自治体の財源に依拠するスカンジナビア型、社会保険方式によるドイツ型がある。そして、わが国では、その折衷ともいうべき介護保険法が当該研究課題遂行中に成立した。本研究では、イギリスとドイツの進展を踏まえながら、主としてスウェーデンとわが国両国の比較研究を行った。 2.1990年代スウェーデンの高齢者介護福祉システム諸改革は、次の7点の特徴をもつとの仮説をえた。第1に、県からコミューンへの事務・財源移譲という分権的改革の内容をもつこと。第2に、民間委託運営方式(いわゆる「民営化」)や「購入-販売」方式等を導入して、公共サービスにおける住民の「選択の自由」拡大を図ったこと。第3に介護福祉サービスの決定権限・予算の現場移譲などが実施されたこと、第4に、1960年代以降のコミューン合併の弊害を克服するために、「自治体内分権」を実施して地域民主主義促進をはかったこと、第5に、以上を通じて住民の公平性に配慮しつつ、公共サービス供給の財政責任明確化を図ったことであった。そして、こうした高齢者ケアサービスの地域レベルでの実施を支えるために、ホームヘルパーなどのケアワーカーの養成確保とともに、専門性をもつケアマネジャーが確保・養成されてきたことが第6番目の特徴点であり、ソーシャルワークの一部ともいえるケアマネジメントを担う専門職種の確立とともに、それを高等教育レベルの職業教育制度として急速に整備してきたのが第7番目の特徴点であった。 3.わが国のケアシステム動向も急であるが、1990年中葉までの制度・政策議論と実状をまとめ、『高齢者福祉の財政課題-分権型福祉の財源を展望する』(単著、あけび書房、1995年7月)、272ページ)として刊行した。
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