1.研究目的は、(1)1930年代、40年代のドイツ自動車産業における大量生産システムの発展と経営形態について解明すること、(2)戦前戦中期の技術や経営ノウハウが戦後東西ドイツ、とくに東ドイツの自動車産業にどのような形で継承されたのかについて解明すること、に置いていた。その場合に特に重視したことは、ドイツ統一後に全面的に利用に道が開けた旧東ドイツ公文書館の自動車産業史関係史料(第1次史料)を収集し、それを詳細に検討する考証的研究を実施することであった。資料収集については、所期の目的を達成するができた。 2.研究成果は、まず前者については、膨大は史料を予定通り収集することができた。それに関して、ひとつの論考を「研究成果報告書」に収録した。とくに戦争集結までのドイツ自動車産業史においては、戦後開花する大量生産システムとそれに対応した経営形態の過渡的発展を解明できる手掛かりが得られた。次に、後者については、収集史料の詳細な検討にもとづいて、研究成果をすでに3点の論文(1点は印刷中)と1点の関連論文として発表した。その場合、次の点に注目した。すなわち、耐久消費財生産を犠牲にした旧東ドイツ政府の産業政策のもとで、旧東ドイツ自動車あ差庵はコンビナ-ト形態をとって編成されていたが、ドイツ統一を契機に西側自動車差庵業との競争に晒され、その技術的後進性を露顕して解体・再編成を余技なくされた。同産業の解体・再編成が生産・経営システムや労使関係や環境問題などの点で、どのように進行したのかに注視した。この研究も、引き続き継続的に、研究成果を発表していくことになる。
|