井澤は3年間に3つの論文を発表し、金融学会においてその研究成果を報告した。まず、井澤(1997)において、1992年9月と1993年8月の欧州通貨危機に関してゲーム理論的かつ実証的に分布した。ファンダメンタルズの悪化を原因とするクル-グマンとサンスポットによる投機家の自己充足的な期待の変化によるというオブズフェルドの2つの理論を批判して、シグナリング・ゲームに基づく通貨危機のモデルを代替的に提示した。さらに、井澤(1996、1998)において1999年1月1日にスタートする予定である欧州通貨統合について、その課題と展望をまとめた。98年5月にユーロ加盟国が決定される予定である。マ-ストリヒト条約に明記された参加の5条件をいくつの国が満たすことができるかは、97年のデータが発表されるのを待たねばならないが、単一通貨ユーロ(euro)が誕生した時に国際金融システムにどのような影響を及ぼすことになるか計算を行った。 藤田は、国際通貨論、国際通貨制度論の視点から、EMSとECUについての研究を行った。EMSについては、80年代後半からの安定期に、本来の対照的な制度からドイツを中心とする非対称な制度に変質したことの原因と意味を明らかにした。ECUについては、特に民間ECUを中心とした、通貨統合過程が進展しなかった原因を、通貨としてのECUの未成熟性に求め、さらには競争通貨アプローチの理論的な問題点も明らかにした。1999年1月にEMUがスタートすれば、国際収支調整や金融政策における非対称性と、国際通貨の機能における非対称性は消滅するが、各国の実体経済面での非対称性は依然として存在するため、EMUが各国の産業構造(分業構造)におよぼす影響によっては、EMUが実物ショックにより大きく撹乱される可能性がある点を指摘した。これらの研究成果については、金融学会(1996年)、信用理論研究学会(1997年)、国際経済学会(1997年)で報告した。
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