(1)第1論文は投機の本質をゲーム理論を用いて分析し、「バブル」の生起を合理的行動によって説明している。それは銀行の公共性が容易に損なわれることを示している。分析結果は次の通りである。 (i)玄人が売材料を入手したにもかかわらず買行動をとり、素人をバブルの犠牲にしてより高い利得を得ようとするのは玄人がbad peopleであるからではなく、それが単に自己の目的関数を最大化するからである。バブルは玄人の合理的行動の結果として起こり得る。バブルが生起するか否かは素人の行動に依存している。 (ii)売材料が生起する事前確率の大きさが大きくなればなるほど、玄人が売材料が出ているにもかかわらず買行動をとる確率は小さくなり“bubble"は生じにくくなる。 (2)第2論文はゲーム理論を用いて銀行の公共性を、郵便貯金との複占モデルで検討している。銀行の規範的行動分析についての分析結果は次の通りである。 (i)国民経済の厚生の観点からは、預貯金市場が郵便貯金によって独占された方が好ましい。より厳密に言えば、官営の郵便貯金は国民経済全体の厚生の最大化を目指しているが、それは完全競争市場の目指すものと一緒である。その意味で預貯金業の官営化は事実上の預貯金市場の完全競争市場化を意味する。 (ii)民間銀行独占の状態にある預貯金市場に自営の郵便貯金が参入して、民間銀行・郵便貯金間の同時手番のク-ルノ-競争を始めると、国民経済全体の厚生を高める。民間銀行・官営の郵便貯金の複占状態になり、逐次手番のク-ルノ-競争を始めると、銀行が追従者、郵便貯金が主導者のときのナッシュ均衡は同時手番のナッシュ均衡とまったく同じである。銀行の選好はク-ルノ-複占、シュタッケルベルク複占(追従者)について無差別であり、郵便貯金の選好はク-ルノ-複占、シュタッケルベルク複占(先導者)について無差別である。
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