『ロンドン証券取引所:公式年鑑』の分析の結果、ロンドン証券取引所における海外証券の占める役割が、投資先の変動を含みながらも、飛躍的に高まったことが明らかとなった。そこで、『ロンドン証券取引所:総務委員会議事録』の内、この時期の主要議事録を、詳細なノートと索引を作成しながら、検討した。これによって、19世紀中頃までは、主として国内の公債・鉄道証券市場であったロンドン証券取引所が、海外証券の取扱い増加により、必然的に機構上の変容を余儀なくされた過程が若干明らかになった。一応の成果としては、機構改革が大手証券業者と中小証券業者の利害対立として現れたことが注目される。さらに、証券業者の国際的な投資ネット・ワークが、電信・電話の普及により技術的に可能となった国際的な裁定取引の活発化を契機として形成されたことが判明した。 しかし、第2の目的である証券業者間の国際的な投資ネット・ワークの形成に関しては、現在本格的に検討中である。また、その際の研究上の問題点として、ロンドン資本市場を中心に多角的に形成された国際ネット・ワークの内、英-米、英-大陸欧州間の量的重要性の比較は、資料の点から困難であることが、判明した。具体的には、イギリスの国際投資額と業者間の裁定取引提携の関連が、理論的にも問題となる。そこで、英-米間のネット・ワークに研究を限定し、米証券業者の個別的な関係を明らかにしている社史などの少ない文献資料をもとに、解明を進めている。
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