平成7年度においては、香港の金融システムに関する基本的な資料の収集を行った。香港の金融統計に関してはわが国でもまとめて収集されることが少なく、分析にとって有益なものとなった。とくに在香港金融機関の対外的なプレゼンスに関する統計が本研究との関連で興味深い。対外的なプレゼンスにおいては、日本の金融機関の役割が大きいことがわかった。例えば、資産のシャアでは、1985年には全銀行の36%から1992年には55%まで拡大しており、邦銀が香港金融市場で圧倒的勢力を持っている。しかし、その邦銀は香港における預金の採り入れでは1992年に12%のシェアしかなく、また、香港内における貸付のシェアも21%で最大勢力ではない。このことは、香港の邦銀が香港にありながらそこを業務対象とするのではなく、海外との取引を主要な業務としていることを意味している。具体的には、日本のオフショア市場からインターバンクで取り入れた資金を、日本の非銀行法人企業へ融資するという迂回融資を行っていたのである。 以上の分析に基づいた報告を研究者が所属する「世界経済の動態研究会」報告を行い、意見を求めた。この報告の意見交換の中で、邦銀の迂回融資は近年それほど大きくはないのではないか、邦銀の対中国プロジェクト融資に関してはどの程度のシェアがあるのか、等の意見が出された。また、邦銀が中国に対してどの程度融資を行い、その経済発展に貢献したのか解明する必要があるが、平成8年度には分析の仮定でこうしたデータを収集する必要性がでてくるであろう。例えば、香港金融市場で組成される中国向けシンジケ-トローンにおける邦銀の関与を具体的な数値で捉える必要がある。そうしたデータは、おそらく公式な形では明らかになっておらず、South China Morning Post等の新聞をフォローする事によってしか入手できないと思われる。我が国に存在するそうした新聞や雑誌からデータを出来る限り収集する必要がある。
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