(1)「アメリカ銀行産業衰退論」関係:この課題に関するアメリカの代表的な議論4点と、本研究の担当者高木による作業に基づき、サーベイを行い含意を探り論文にまとめた。その要旨として、(1)銀行活動をオン・バランスシート面で捉えれば銀行産業衰退論が妥当するが、オン・バランスシート面とオフ・バランスシート面の両方から捉えれば、銀行産業衰退論どころか銀行産業成長論が妥当すること、(2)銀行、信託、証券、保険、その他の金融関連企業などを巻き込む、広義の金融サービス産業への移行が始まっていること、(3)したがって銀行産業の性格が変わる可能性があることなどが、中間期的にみれば主張しうる(研究成果の公表については、裏面参照)。 (2)「グラス=スティーガル法改正問題」関係:本研究課題は、上記のように銀行産業が変化している側面を含んでいる。そこで、その重要な部分の一つである銀行・証券分離規定の緩和ないし撤廃を目指す、グラス=スティーガル法改正問題は避けて通れないところである。アメリカ連邦議会で、1988年から実質審議の始まったグラス=スティーガル改正法案審議について、中期的な経緯と現状を研究し論文にまとめた。その要旨は、(1)金融制度改革の残された大きな項目はグラス=スティーガル法改正であるが、(2)制度改革を実行するに足る実体経済側のインパクトが弱く、(3)法改正はさらに持ち越されるであろう、というものである(同上)。 (3)「金融持株会社」関係:(1)と(2)に関連した問題のわが国における展開が、近年における金融持株会社構想の成り行きである。アメリカの銀行持株会社構造に類似したわが国の金融持株会社構想について、事態の説明と将来の展望を論文にまとめた(同上)。
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