アメリカ銀行産業衰退論において、「銀行の衰退」とは銀行活動をオン・バランスシート面で捉えたとき、金融機関全体の総資産に占める銀行資産のシェアが第2次世界大戦後の半世紀間に、半分以下へ縮小した事実から指摘されたものである。確かに、オン・バランスシート面で捉えれば銀行産業衰退論は妥当するが、オン・バランスシート面とオフ・バランスシート面の両方から捉えれば、銀行だけでなくその他広義の金融機関を含む金融機関産業が、衰退どころか逆に成長を続けている事実が明らかにされている。このことは、銀行、信託、証券、保険、その他の金融サービス企業を巻き込む、新しい総合金融サービス産業への移行が始まっている事実の一面を示すもので、銀行産業の性格が変わる可能性があることなどが、中長期的にみれば主張しうると考えられる。 (1)「金融持株会社構想」関係:アメリカでは上記のように、銀行産業は変化を続けているが、その一面は銀行・証券・保険にまたがる金融業際問題として展開され、金融サービス持株会社という枠組の新設が検討され、現在まだ実現してはいないが連邦議会でも論議されている。この問題は本研究課題に深く関係し、わが国では金融持株会社問題として脚光を浴びているので、わが国の金融持株会社構想について研究し、研究会での報告や講演でこれを扱い論文にもまとめた(研究成果の公表については、裏面参照)。 (2)「ナロウ・バンキング」関係:(1)の問題意識に関連して、金融持株会社の具体的な仕組の一部である、ナロウ・バンキングの研究を行った。従来、ナロウ・バンキングは信用創造を伴わない難点が指摘されてきたので、この難点を回避する仕組を新たに構想し、金融学会全国大会(於熊本学園大学)で発表し論文にもまとめた(同上)。
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