銀行産業衰退論は、オン・バランスシート基準で銀行を観察した結果に立っている。しかし、信用保証やデリバティブ取引など、オフ・バランスシート業務を勘案すれば、衰退論は否定される。長期的ないし超長期的にみると、われわれは銀行業務のありようが、変わり目に差し掛かっている時点へ、たまたま遭遇している可能性が強い。 銀行は長い間、「当座預金受入れと企業貸出を併わせて行なう機関」、と定義されてきたが、「金融リスクを引き受けて管理する機関」、または“A bank is what a so-called bank does."と考えるほうが、現実に存在する銀行の働きをうまく説明できると考えられる。 わが国とアメリカと、銀行産業ないし金融機関産業で現実に起こっていることは、従来の業態の枠組を超えて各種の動いている事態である。ことに社会変化のスピードの早いアメリカでは、金融機関市場の実態が上記のような転換を遂げているとともに、連邦議会はこれに対応できるよう金融機関の業務範囲の大幅な拡大を認める、金融サービス持株会社や多角持株会社の仕組を容認する法案の審議を、1991年から継続的に行っている。また、1997年11月アメリカ財務省が公表した報告書「21世紀のアメリカ金融(Aerican Finance for the 21th Century)」も、政府は商品別、供給者別、および地域的に区別されてきた金融市場を開放し、総合金融サービス産業が成り立つ方向を目指すべきだとしている。わが国で、1998年4月から本格的な取組みが行われる日本版ビッグバンも、いわゆるディファクト・グローバル・スタンダードへ合わせて、上で述べたような事態へわが国を誘導することになっている。 1997年度、本研究の担当者は以上の流れを把握したうえで、別記の通り報告(1997年11月、証券経済学会全国大会)と論文発表(1998年1月、分担執筆書)を行った。
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