(1)新古典経済理論は不確実性のある世界も想定した理論展開をしているが、基本的には「Erogodicな世界」を想定していない。人々は「Erogodicな世界」ではなく、確率計算の科学的知識を欠くという意味での「不確実性の世界」に生きており、しかも所得水準や資産蓄積の上昇は不確実性を時間的・空間的に増大させ、非効率的市場状態を現出させる。 市場情報、殊に価値ある情報は市場を効率化させる力となる。価値ある情報の判断は情報入手コストと情報の収集能力・解析力による利益との比較秤量に依存する。ところで、情報収集力・解析力(=情報サーチ力)は「制約された合理性」主体の下では必ずしも最適均衡状態をもたらすのに十分ではなく、その制約された合理性主体は「より満足ゆく選択(Selection Satisfic)」を選択する。ところで、情報入手コスト面においても、また情報のサーチ力においても高金融資産蓄積世帯ほど高い、金融自由化により様々な金融商品が開発され、金融資産間の収益率格差が大きくなるにつれ、また金融情報の質的・時間的多様性が高まるにつれて、一層その傾向が高まる。こうした事情が様々な調査でみられる個人部門の金融情報認知度を説明する。(2)個人部門の金融情報の認知度の差、したがって個人部門の金融情報の入手コストとサーチ力の差に影響する要因の1つに金融機関の差別縮小情報提供の影響があると考えられる。金融機関の情報活動と金融資産選択への影響を貯蓄預金動向をもとに考察すると、金融機関情報の貯蓄預金動向の説明要因としての有意性が検出される。(統計資料上の制約から限定的ではあるが)
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