今年度は3年間にわたる研究の第1年目にあたるため、資料収集や基本文献の整理等が中心となった。同時に「EU統合と公的金融の新展開」という研究テーマに中味について、ある程度は絞り込むことを決めた。具体的には(1)EU統合に伴い、公的年金の資金運用にどのような影響が発生していくのか、またEU統合のなかで財政赤字削減が求められるもと、公的年金はどのような影響を受けるのか、(2)EUの公的金融機関としての欧州投資銀行はEU統合においてどのような役割を果たしているのか、という2点に絞り込むこととした。 今年度の実績としては、翻訳「岐路に立つスエ-デンの公的年金」、研究ノート「EU統合下の財政赤字削減と高齢化、年金問題の矛盾」、発表予定としては、研究ノート「EU統合と欧州投資銀行」がある(いずれも詳細は裏面参照)。また金融学会春季全国大会(96年5月、武蔵大学)において、「EU統合と欧州投資銀行〜公的金融の観点から〜」という論題で報告することが内定した。 若干の補足説明をすると、公的金融の定義とは「公共部門の金融活動」と考えられ、公共部門が年金等の保険料を受け取り、資金運用する場合(積立方式)には公的金融の一部と把握できよう。また政府が出資している銀行は公的金融機関であって、欧州投資銀行のようにEU加盟国が共同出資する銀行は国際的な公的金融と把握される。
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