本研究の目的は、EU統合のもと、EU加盟国およびEU自体の公的金融の新展開を明らかにするものであった。特にEUの公的金融機関としての欧州投資銀行の分析に取り組むことが課題とされた。 今年度の成果としては、金融学会春季全国大会(武蔵大学、5月26日)での報告「EU統合と欧州投資銀行」、財政学会全国大会(日本大学、10月27日)での報告「EUの財政と公的金融」、研究ノート「EU統合と欧州投資銀行」(『立命館国際研究』、9巻1号、1996年5月)、論文「欧州投資銀行による公的金融と証券発行」(『証券経済研究』、第5号、1997年1月)である。 研究による結論としては、第一に公的金融として欧州投資銀行は拡大していること、第二に財政と公的金融の関係は補完関係といえることである。さらに第三に、問題点としては以下のような諸点を指摘できる。欧州投資銀行債は広義の公債としてとらえられるべきでありその残高増加は広義の財政赤字拡大を意味すること、欧州投資銀行の融資の一部にはEU財政によってオフバランスで債務保証がついていること、アフリカむけを中心に欧州投資銀行の融資に財政資金によって利子補給されていることを指摘できる。 他方、スエ-デンにおける公的年金と資金運用についても、一定の進展をみている。現在とりまとめているが、その成果は97年4月公刊予定の『立命館国際研究』に「スエ-デンのEU加盟と福祉国家の再編成」として掲載されよう。福祉国家スエ-デンにおいても財政赤字問題は深刻であり、公的年金改革が進められている。賦課方式年金の保険料率引き上げ、拠出金支払に応じた年金給付等が改革の柱となろう。
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