研究概要 |
1.連邦諸国家の地方政府をめぐる議論について,地方政府行動,地方分権の効果,地方公共財の需要と供給,地方政府支出の意思決定プロセスなどのトピックスを中心に,分権的な財政制度に関する理論的・実証的研究の体系的な文献サーベイを行い,そうした議論を日本の地方財政の実証研究に応用していく足がかりをつくった.その成果の集大成として,著者『公共選択と地方分権』の刊行をみた(「11.研究発表」に記載). 2.財・サービスを地域社会で公共財として共同消費していく際の,意思決定の理論的条件を明らかにし,論文にまとめた(「11.研究発表」に記載).またこの研究は上記1の著書の一部にいかされている. 3.分権的意思決定モデルとしての需要サイドと供給サイドのモデルを統合する新たなモデル構築のアイディアを,小澤太郎氏(慶応義塾大学)との共同研究としてワーキングペ-パ-にまとめた(「11.研究発表」に記載).この研究も上記1の著書の一部にいかされている. 4.地域福祉サービスを地方公共財として供給するうえでの最適なシステムを論じた(「11.研究発表」に記載).またこの論文で展開した実証モデルを,日本の地方財政に応用していくうえでのデータ面でのめどが付き,現在推定作業を進めている. 5.地方分権の理論と現在日本で展開されている分権的議論との関連性について検討し,論文「地方分権の経済効果」としてまとめた(ただし現在掲載先を探している). 6.分権理論を日本の地方財政へ応用した実証分析「地方公共財に関する需要関数の推定:単独事業費を用いた推定」を,現在ワーキングペ-パ-として執筆中である. 7.日本の地方交付税制度に関する実証分析について,現在予備的な推定結果をえ,学会などでの報告を準備している. 8.以上の研究と平行し,長年筆者が訳者代表として携わってきた翻訳書,オ-ツ著『地方分権の財政理論』(第一法規出版)が刊行された.
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