研究概要 |
1.分権的な財政制度をとっている欧米諸国家を対象に展開されてきた.地方政府・地方財政・公共選択プロセスをめぐる経済分析についての文献サーベイを進め、その理論的・実証的研究の体系化を図ってきた. (1)全体的な成果を著書『公共選択と地方分権』として刊行した. (2)地方政府と公共財に関する問題として,第1に,公共財を地域社会で共同消費していく際の人々の意思決定の理論的諸条件を明らかにし,第2に,その集合的な意思決定の結果を,資源配分の効率性という観点から論じた実証分析について検討を加え,それぞれ論文としてまとめた.これは上記図書の一部に利用されている. (3)著者が訳者代表として携わってきたアメリカの地方財政分野におけるバイブル的著書,オ-ツ著,Fiscal Federalismの翻訳(邦題『地方分権の財政理論』)が完成をみた. 2.上記1で行った分権的財政理論の検討をふまえて、日本の地方財政に応用して議論する可能性を探ってきた. (1)地方公共財の議論を,日本の地域福祉サービスや公的介護保険制度の議論に応用し,分権的な供給システムの可能性を論じた.アディア自体は学会発表され,論文としてもまとめられた. (2)オ-ツ流の分権理論を日本の地方分権論に応用し,地方分権の経済効果という形で研究成果をまとめた. (3)日本の地方財政(県単位)を対象に,分権的理論の応用である「地方公共財に関する需要関数の推定」を試みてきた.研究成果の一部は1であげた図書の中でも紹介し,現在それをさらに進めた論文を執筆中である. 長年継続的に行ってきた研究として,政府間補助金のフライペ-パ-効果と呼ばれた議論を日本の地方交付税に応用した理論的・実証的分析の英語論文が,受理・刊行された.
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