本年度は国際マーケティング複合化の理論的研究をまとめることと、アンケート調査を行うための項目立てに多大の時間を取られた。理論的研究の方は角松正雄・大石芳裕編著『国際マーケティング体系』ミネルヴァ書房(1996年3月)の拙稿・第6章「国際マーケティング複合化戦略」に成果発表している。そこでは従来の国際マーケティング標準化論争をサーベイし、現在の国際マーケティングが「標準化か適合化か」という問題設定では処理しきれないことを理論的に説明している。そして、それに代わるものとして複合化概念の重要性を強調している。そればかりでなく、複合化を把握する新しい理論的枠組と具体的な方策についても言及した。 アンケート調査項目立てはやや難航した。それは色々な企業のヒヤリングや内外の研究者との議論の中で、従来の国際マーケティング標準化あるいは適合化を調べる調査とはかなり異なる項目立てが必要であることが明らかになったからである。とりわけ、平成7年11月から平成8年2月にかけての海外研究者からのコメントで項目立てをかなり修正した。その結果、アンケート発送がかなり遅れることになり年度末になってしまった。計画ではアンケート調査結果のまとめまで今年度に完了する予定であったが、実際にその作業ができるのは平成8年度になる。ただ項目立ての作業の中で、(1)企業全体を対象とするのでなく、対象製品と対象市場を絞って調査すること、(2)意思決定の集権化・分権化とは別に、どの国籍の人間が意思決定するかが複合化にとって重要であること、(3)国際比較のためには第三国市場でのマーケティングを比較すること、が大切なことが分かった。(3)についてはタイでの調査を加えている。調査結果が得られれば、順次、世界的に発表していく予定である。
|