(1)近年、各国における財務会計上の重要な検討課題となっている連結財務諸表の作成基準をとりあげ、これを「法形式よりも経済的実質を優先する」という視点から再検討を加え、公表財務諸表制度への経済的実質優先思考の導入可能性について研究した。 (2)連結財務諸表の地位について、伝統的な公表財務諸表制度においては、法形式を重視し、法的実体としての各法人の個別財務諸表を基本財務諸表とし、複数の法人によって構成される企業集団を対象とする連結財務諸表は、個別財務諸表を補足するための情報として位置づけられてきた。企業活動のグローバル化、多角化が進展している現状に照らして、企業内容の経済的実質に関する利害関係者の情報要求に的確に応えるためには、上記の主従関係を逆転し、連結財務諸表を主とし、個別財務諸表を従として位置づけることが有効であることを明らかにした。 (3)連結財務諸表の対象とすべき企業集団の範囲を決定するための基準として、伝統的な持株比率基準に代えて支配力基準を導入することが、企業内容の経済的実質の開示という目的に適合することを明らかにした。 (4)連結財務諸表の作成にあたっては、企業集団を単一の経済的組織体とみなして、当該企業集団を構成する親会社および子会社のすべてに対し、統一的な会計方針を採用するよう求めることが合理的であることを提言した。 (5)連結財務諸表に対する注記その他の開示情報に関し、連結財務諸表中心の会計制度を構想する限り、(1)附属明細表の添付、(2)有価証券その他の金融商品に係る時価情報の開示、(3)キャッシュフロー計算書の導入、(4)中間連結財務諸表の作成、(5)セグメント情報の一層の充実などを求めるべきであることを提言した。
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