研究概要 |
ドイツの法人税制のなかで企業集団に対する現行課税方式が単独納税方式によっているが、これはヨーロッパ連合加盟国のなかでむしろ少数派に属している。今年度の研究は,このドイツの企業集団課税がヨーロッパの他の国に比べてどのような特徴があるか、またドイツが現在どのような法人税制に向かおうとしているのか、この2点について取り上げた、つぎのような成果を挙げることができた。 (1)ドイツは単独納税方式のもとで、企業集団課税方式として、機関制度納税方式と呼ばれる独自のシステムを採用している。これは、ヨーロッパ連合のなかでも特異な課税システムである。企業集団課税方式として、一般の採用されている連結納税方式とは計算構造的に違ったものである。この点の研究成果として、「ヨーロッパにおけるコンツェルン課税方式とドイツ税制の特徴」(産業経理、第55巻2号、1996年)を発表した。 (2)ドイツの機関制度納税方式に関する研究を進め、連結納税方式との違いとして、親子会社関係の課税所得計算がそれぞれの単独決算をベースとした合算所得課税にその特徴があることを明らかにすることができた。連結決算ベースの連結納税方式でなく、機関制度納税方式がなぜドイツで採用されているのか、連結納税方式導入がどのような問題点をドイツ税制に投げかけているのか、これらの点を研究することで、わが国における今後の議論への新たな論点を提供することができた。この研究成果として、「連結納税方式めぐるドイツの論点とわが国制度へのインプリケーション」(JICPAジャーナル、第8巻5号、1996年、発表予定)を纏めることができた。
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