先進工業国のなかで、ドイツ税制は、法人税制のなかに企業集団課税システムを設けている国の1つである。近年、この企業集団課税システムに関して、ヨーロッパ域内の税制のハ-モナイゼーションが起き、グローバルな企業集団に対する課税ベースの算定方式をめぐって議論が起きている。本研究では、この企業集団課税システムのドイツ方式を取り上げ、そこでの検討課題を考察し、我が国における企業集団税制の整備に向けたアカディックな論点を以下の2点について明らかにしている。 第1に、ドイツは単独納税方式を原則として採用するとともに、企業集団課税システムとして、機関制度納税方式を特例的に認めている国である。この機関制度納税方式とは、親子会社の課税関係を捕捉し、親会社と子会社がドイツ国内で事業活動行い、子会社が財務的、経済的及び組織的に親会社に編入され、さらに、親子会社の間に5年間の利益供与契約が締結されていることを要件として、子会社の損益を親会社に移転させ、親会社側で損益合算をして、親会社に納税の義務を負わせるというものである。本研究では、この機関制度納税方式というドイツの企業集団課税システムの特徴が親子会社間の内部取引の消去を認めていない点で、欧米各国が採用している連結納税方式と決定的に異なっていることを明らかにしている。 第2に、機関制度納税方式から連結納税方式への以降に関して、ドイツで検討されている機関制度修正方式が内部取引の消去をも認めるかたちで、実質的に連結納税方式と変わらないことを明らかにしている。これは、「機関制度のヨーロッパ化」と呼ばれ、国境を越えた企業集団課税にも適用が可能である。 本研究の成果として、「ヨーロッパにおけるコンツェルン課税方式とドイツ税制の特徴」(『産業経理』産業経理協会刊、第55巻第2号、1996年)及び「連結納税方式をめぐるドイツの論点と我が国制度へのインプリケーション」(『JICPAジャーナル』日本公認会計士協会刊、第8巻5号、1996年)の2つの論文を公刊することができた。
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