平成7年度では、設備備品および必要関連資料の整備を一つの重要な課題とし、実証的側面での分析を備えるとともに、現在、進展のめざましい企業理論の成果を可能なかぎり、サ-ヴェイレ、取得原価主義会計システムを経済的に分析するための視点、分析枠組み、分析ツールを理解することを主たる目的とした。 取得原価主義会計システムは、代替的な、インフレーション会計システム、時価主義会計システムと比較した場合、利害の調整機構としての市場システムの依存性の程度が小さい、企業に関する配分・分配の信号生成システムとして特徴づけることができる。 ここでの論点の一つは、(完全)市場システムが広範に浸透するにつれて、取得原価会計システムは、市場システムへの依存性の程度が大きい、その他のシステムに取って替わられるのかどうか、取って替られない(市場システムが浸透している状況においても、依然として取得原価主義会計システムは生き残り、存続する)とすれば、経済的効率性の観点から、どのような状況の下で、取得原価主義会計システムは、代替的な会計評価システムに比べて、比較優位があるのか、といった点である。 これらの論点を分析するためには、「比較制度分析」に含まれる、種々のアイデア、多様な分析ツールが有益であると覚り、本年度において、会計評価システムに応用することを目的に、現在注目されている「比較制度分析」の基礎を理解した。次年度以降、理解した知識を、理論面、実証面で積極的に応用しようと考えている。
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