本報告書は、以下の四章から構成されている。第一章「原価企画の現状と課題:日本と欧米の比較」では、日本企業が直面する原価企画実践上の諸問題を指摘したのち、欧米企業での原価企画導入状況および原価企画の進展状況を概観している。そして、このような欧米における諸活動から日本企業が何を学ぶことができるかを明らかにしている。 第二章「原価企画による戦略的コストマネジメントの課題」も第一章とほぼ同様の視点から、現行の原価企画システムが組織内でうまく機能しない理由を明らかにした後、原価企画を戦略的コストマネジメントの観点から実践することによって、現状の閉塞状況からの脱出が可能であることを示している。 第三章「原価企画の海外移転に関する予備的考察」は、研究代表者が三年以上にわたって従事している欧米企業の原価企画導入活動の参与観察研究プロジェクトの概要を示している。これまでの原価企画に関する研究は、ケース研究、文献研究、および統計的実証研究などに限定されてきた。この章で紹介している研究プロジェクトでは、「経時的参与観察法」と呼ばれる、これまでに適用されたことのないケース研究方法論に依拠し、実務に深く潜入し、プロジェクトの立ち上げから原価企画の導入プロセスを記述することを目指している。この企業では、日本企業での実践を多面的に研究し、日本企業が遭遇した数多くの問題を回避しながら、新たな原価企画システムの構築を目指している。もちろん、単に製造原価の低減だけを目指すのではなく、ライフサイクルコストを対象とした理念形にきわめて近いハイレベルのシステム構築を目指している。この研究プロジェクトからの研究成果が取りまとめられるまでにはあと数年を要するが、ここで示したような研究方法論に依拠した研究が他の研究者によっても実施されれば、われわれの原価企画に関する知識ベースはさらに豊かなものとなるだろう。 最終章である第四章「原価企画に関する実態調査報告」は、神戸大学管理会計研究会が実施した調査の概要が示されている。この調査によって、わが国企業の原価企画実践の全体像を把握することができるだろう。本格的なデータ分析はこれから実施されることとなっている。
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