本研究では、時価情報の開示の株価への効果を実証的に吟味する。具体的には、平成2年から始まったわが国銀行の有価証券含み益の開示と銀行株価の関係を分析している。銀行では、90年3月決算期から上場有価証券の時価情報の開示が開始された。本研究では、Barth(1994)等を検討し、モデルを定立し、この開示が、銀行株価に適切に反映されているかが問われる。 平成7年度の研究では、都長信銀21行を対象に、90年3月決算期から11期の半年データと6年の年データを収集し、パネル分析を導入し、モデル定立のための分析を進めた。また、最終の分析にむけデータ収集の範囲を全銀行に拡張し、その作業のほぼ2分の1を完了した。 業務利益、BIS自己資本、貸倒引当金、各種の予想利益などデータ項目を幅広く追加し、各項目と株価との関係をテストした。その結果、株価と利益、株価と含み益に明確な正の関係が認められた。つまり、本研究での基本モデル部分がほぼ固まってきた。モデル定立では、Barthモデルが否定されるか、大幅に修正されるであろう.ただ、都長信銀21行の分析結果であり、全上場銀行でもこの関係が安定して認められるかは、8年度のより詳細な研究を待たねばならない。 これに並行して、8年度に向け、実証用のフル・データの整備を進めた。中間決算と予想情報等に手入力データがあるため、補助者にデータ収集を依頼した。データ収集作業の大半の時間は、手入力の作業にさかれた。本年度中にほぼ5割のデータが入力された。
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