研究概要 |
今年度は、研究計画に述べた実ahel体のideal類群の研究に於て、大きな進展があった。任意の素数p,実ahel体kに対して、その円分p拡大k∞=Uknのideal類群に付随して、岩澤不変量λ=λp(k),μ=μp(k)が定まる。λ,μはともに0であろうと予想(期待)されている。μ=0は既に示されている。この予想は、円分体の岩澤理論の基本問題(の1つ)でありながら、信ずるべき哲学的根拠はない。それどころか、(多くの人々の努力にもかかわらず、)個々のp,kに対して、λを実際に、計算する事さえ困難であった。その理由は、kが総実なので、k∞/kの各中間体knの単数群Enが大きすぎて捕えるのが困難な事にある。 今年度は、隅田浩樹氏との共同研究で(多少の条件下で)λの極めて有効な計算方法を確立した。これを用いて、例えば、p=3の時、実2次体k=【.encircled@.】61(√m)(1<m<10^4)でλ=0を確かめる事ができた。このなかには、Greenherg等による最初の挑戦以来20年間も計算される事を拒否し続けてきた【.encircled@.】61(√254),【.encircled@.】61(√473)等の悪名高い例がふくまれている。 計算のポイントを述べよう。簡単のため、p=3,k=実2次体とする。xをkに対応するDirichlet指標とし、gx(T)をP進L関数LP(△、X)に付随する巾級数とする。λ^*をgxのλ-不定量とすると、λ≦λ^*が知られている。更に簡単のためλ^*=1としよう。この時、gx(T)は唯一つの零点αの(Zp)を持つ。Yn(T)を、P^<n+1>を法として(1+T)^<Pn>-(1+α)^<Pn>)/(T-α)に合同なZ-係数を多項式とする。αの近似値は容易に計算できるが、Yn(T)が単数群Enを“捕まえる"力を持っている事を発見したのがポイントである。
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