研究概要 |
種数g(【greater than or equal】0)のコンパクトリーマン面から相異なるn(【greater than or equal】0)個の点を除いて得られるリーマン面をR^n_g、その写像類群をΓ^n_gとする。R^n_gの基本群にはweight filtrationと呼ばれる中心的なfiltrationが自然に定まり、それによりΓ^n_gにもfiltration{Γ^n_g[m]}^∞_m=0(Γ^n_g=Γ^n_g[0])が誘導される。Γ^n_g/Γ^n_g[1]【similar or equal】Sp(2g;Z)であり、Γ^n_g[m]/Γ^n_g[m+1](=gr^m(Γ^n_g)とかく)(m【greater than or equal】1)は階数有限の自由アーベル群で自然にSp(2g)作用が定まる。小さいmについてはgr^m(Γ^n_g)の構造はJohnson、森田、朝田-中村等によってわかっているが、一般にはその階数もわかっていない。 以前筆者は、2つの境界付きリーマン面を(境界で)はり合わせてコンパクトリーマン面が得られるときには、その写像類群のfiltrationは各成分の写像類群のfiltrationとstrict compatibleであることを示した。(コンパクトでない場合は中村氏による。)これを応用して、コンパクトリーマン面の写像類群Γ_gについて、gr^m(Γ_g)のrankをgr^m(Γ^n_1)のrank(それは比較的容易に与えられる)を用いて下から評価することができた。これは、織田氏によって(数年前に)得られているgr^m(Γ_g)のrankの評価の類似である。 一方、写像類群Γ^n_gのπ_1(R^n_g)への作用から、Γ^n_gのπ_1(R^n_g)への作用が誘導される(^はprofinite completion)。これがn点付き種数gの代数曲線のモジュライ空間M_<g, n>上のuniversal curveに付随して定まる大域的なモノドロミ-表現に他ならない(織田)。この表現が忠実か否かは基本的問題と思われるが、一般の場合にはわかっていない。g=0の場合には(比較的容易に)忠実性を示すことができ、それを利用してg=1の場合にも忠実性を示すことができた。
|