研究概要 |
上半平面に作用する算術的な群,とりわけHecke合同部分群とRiemann zeta-関数との直接の関係は,本研究代表者によってはじめてつまびらかにされ,代数的・幾何的構造(すなわち双曲構造)がRiemann zeta-関数に内在することが確立した。この成果は "Spectral Theory of the Riemann Zeta-Function" として,Cambridge大学出版局より出版されるはこびである。本研究の後半においては,上記の成果を3次元双曲多様体としての,上半空間の商空間(Picard-Bianchi)におしひろげる作業に入った.その目的とする所は,Riemann zeta-関数が因子としてふくまれる代表的なゼータ関数として,2次体(とくに虚2次)上のDedckind zeta-関数のスペクトル解析である。2次体の整数論ははるか昔から,もっぱら代数的考察によって研究されてきたのであるが,ここにおいて,はじめて現代的関数解析との結合がなされることとなった。3次元双曲多様体は,位相幾何学上も特に注目すべき研究対象であるが,ゼータ関数の一群のものとも深く関係していることが観察され,代数学・幾何学・解析学が1点に集中する新しい現象を得たこととなる。これらの成果は,主として,平成9年7月にPolandアカデミーによって主催される国際会議において,主講演として発表される予定である。
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