階数2のリーマン面上の安定ベクトル束の同値類のなすモジュライ空間上の、正則直線束の切断の基底を、Qullen行列式を用いて具体的に構成することに成功した。これは数年来研究を続けてきた課題であるが、Qullen行列式を境界値問題に適用する着想により解決できた。この構成法はさらにSU(2)共形場理論をアーベル化することにも役立った。具体的にはSU(2)ベクトル束のモジュール空間上に(P^1)^<3g-3>×(C^*)^<3g-3>という別の複素解析空間をとり、SU(2)ベクトル束のモジュライ空間上の直線束の引きもどしを考えることにより、階数2データ関数を通常の階数1データ関数によって表示することができた。これらを用いると、3次元多様体のChern-Simons不変量の階数2データ関数による定義が可能となる。このことは同不変量の幾何学的意味づけの解明に大変役に立つと考えられる。
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