研究概要 |
種数g>1の向き付け可能な閉曲面Σ_gの3次元有界コホモロジーをH^3_b(Σ_g;R)とおく.S. Matsumoto-S. Moritaの結果(1985年)を利用して,H^3_b(Σ_g;R)上の擬ノルム||・||がノルムではないことを示した.また,同様の議論をすることによって,5以上の任意の次元の有界コホモロジーで,その擬ノルムがノルムではないような例が構成できた.この結果とは対照的に,Matsumoto-Morita, N. Ivanov(1988年)によって2次元以下の有界コホモロジーの擬ノルムは必ずノルムになることが証明されていた.しかしこれまでには,3次元以上の有界コホモロジーについて何の結果も得られていなかった.したがって上の結果が,3次元以上の有界コホモロジーではノルムではない擬ノルムが実際に存在することを示した最初の例である. 次に,位相的な順なクライン群Γに対し,双曲多様体M=H^3/Γの基本コホモロジー類[ω_M]∈H^3_b(M;R)の研究をした.このとき,Γが初等的であるか幾何的に有限であるための必要十分条件は[ω_M]=0であることを証明した.この結果は,位相的に順なクライン群が幾何的に有界かどうかが基本コホモロジー類のみによって決定されることを意味する.この事実とR. Canaryの被覆定理を組み合わせることによって,階数が2以上の自由群の3次元有階コホモロジーが連続濃度次元であることが証明できた.さらに,Σ_g×R上の双曲構造の定義する基本コホモロジー類全体の生成するHB^3(Σ_g,R)=H^3_b(Σ_g;R)/{α∈H^3_b(Σ_g;R);||α||=0}の部分Banach空間E(g)に対して、商ベクトル空間HB^3(Σ_g,R)は連続濃度次元であることことも示すことができた. これらの結果は,次のような論文としてまとめた. 1.Existence of non-Banach bounded cohomology. 2.Bounded cohomology and topologically tame Kleinian groups.
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