研究概要 |
本年度は,この研究計画の最終年度にあたるので,これまでに得られた結果をまとめそれを発表することに重点をおいた.さらに,当研究課題を進める課程で発見した方法が,申請者の新たな研究にも役に立つことが分かったので,その研究を進めた. Xを位相空間とするとき,そのk-次有界コホモロジーH^k_b(X;R)の擬ノムルを¶・¶で表す.H^k_b(X;R)の元で,この擬ノルムが零であるもの全体の作るR-部分ベクトル空間をH^k_b(X;R)の零ノルム部分空間といい,N^k(X)で表すことにする.すなわち,N^k(X)={α∈H^k_b(X;R);¶α¶=0}.前年度の研究では,この位相空間Xが種類>1の向き付け可能な閉曲面Σであるときを考え,N^3(Σ)が連続濃度次元のベクトル空間であることが証明できた.本年度は,その結果を論文“The zero-norm subspace of bounded cohomology"としてまとめ発表することができた(Comment.Math.Helv.72(1997)582-592). 有界コホモロジーの研究を通じて,申請者は双曲3-単体からなる複体のマイクロチップ分解という概念を導入し,それが3次元多様体間の写像の研究に有効であることを明らかにした.とくに,3次元閉多様体Mから双曲多様体Nへのdeg(f)≠0の写像f:M→Nが与えられているとき,Nの双曲構造を利用して,M上に双曲3-単体からなる複体の構造が定義できる.この複体のマイクロチップ分解を利用して,Mからの次数が零でない写像を許すような双曲3次元多様体はたかだか有限個であることを示した.その結果と応用は次のような論文としてまとめている最中である. T.Soma : Non-zero degree maps to hyperbolic 3-manifolds. T.Soma : Sequences of degree-one maps between geometric 3-manifolds.
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