研究概要 |
非線形Sturm-Liouville方程式にDirichlet条件を与えた境界値問題の第n分岐(すなわち線形化問題の第n固有値から分岐する岐)から非線形項を定めることができるかどうか(これを逆分岐問題という)は、第n分岐が直線に十分近いときには第n固有関数を用いて表されるAbel型の積分方程式が一意可解かどうかを判定することに帰着される。この積分方程式を解析することにより、次のような結論が得られた。 (1)n=1のとき、第1固有値を通る直線に十分近いように与えた任意の曲線を第1分岐とする非線形項が存在し、それは局所的にはただ1つである。特に、第1分岐が直線の場合には非線形項は零である(すなわち線形の問題である)。 (2)n≧2のときも、potential項の対称性が破壊されているような状況のときは、(1)と同じ結論が得られる。つまり、逆分岐問題は局所的に適切(well-posed)である。 (3)(2)の状況と対比的にn≧2でpotential項が完全に対称であるような場合には(2)のような問題の適切性は得らなれい。例えばpotential項q(2)が考えている区間[a,b]上線対称(すなわちq(a+x)=q(b-x)をみたす)ならば、第2分岐を直線とするような非線形項が無限個存在する。よって、第2分岐が直線であるとしても線形の問題であるとは言えない。 上で述べたAbel型積分方程式は、q(x)≡0の場合にはAbelの積分方程式に一致している。それは1/2回積分することで解かれるが、一般の場合には、固有関数に付随した意味で1/2回積分するといった手法で解くことができる。
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