研究概要 |
物理学、特に流体力学、電磁気学、そして相対性理論に現れる基礎方程式は概ね非線型双曲型方程式の形に記述される。これらの方程式に対する大域的理論がまだ十分に発展していない大きな理由の一つは『古典解が大域的に存在しない』、即ち『解に特異点が現れる』為である。そして特異点が種々の興味深い現象が現れる要因となっていることが多い。我々の主な目的は『(1)古典解が存在する領域を明確に記述すること,(2)特異点を越えて解を延長すること』である。本研究ではMonge-Ampere方程式に対して上記の問題を考察した。これは2階非線型偏微分方程式である。これを具体的に解く方法といえばDarboux,Goursat等、France学派により19世紀に深く研究された特性曲線の方法である。この方法の欠点は方程式に対して強い仮定を置かなければならないという点である。しかし1つの試金石としDarboux,Goursatが深く考察した方程式のクラスに対して具体的に解の特異性を構成することから出発した。この方向に於て多少の結果を得ることが出来た。次にその結果を曲面論に応用した。次の課題として「方程式に対してDarboux及びGoursatが置いた積分可能条件を取り除くこと」という課題に取り組んだ。その結果、『或る1階双曲型方程式系』を考察することになった。一般的にそれを解くことは大変難しいことが判った。しかし最近、或る非線型波動方程式の場合にはその方程式系が具体的に、かつ大域的に解けることが判った。我々の解は具体的であるだけに説得力があると信じている。こうして得られた解の形を検討していると、これまでに用いられてきた弱解の概念にも疑問が湧いてきた。現在、弱解の意味を出発点に立ち帰って検討を重ねている最中である。これは今後の研究課題に繋がっていく。
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