研究概要 |
情報数学として、グラフ理論と関連する分野、特に遺伝的アルゴリズム、及び数理論理学について研究した。 グラフ理論関係では、マッチングの自然な拡張である(1,f)-奇次数部分グラフの性質を調べ、これがマッチングと多くの類似の性質を持つことを示した。また、連結因子の研究などもある。この他、平面グラフを平面上に与えられた点集合上に直線で埋め込む問題についても研究した。この問題は1990年代になってから進展をみた新しい問題であり、関連する問題も多く、応用も含めて今後の研究が期待される。 遺伝的アルゴリズムの研究は、主に卒業研究および修士論文課題として、いくつかの問題に対して具体的にアルゴリズムを作成して実験的に調べた。そして遺伝的アルゴリズムの有効性は確かめられた。今後は理論的な研究が必要であるが、交差の複雑性などから極めて難しそうである。 数理論理学の研究では次のような成果を得た。基礎となるクリプキ・タイプ意味論として、クリプキ層を採れば、真理値関手は、Heyting代数を値とする特別な前層と見ることが出来る。すると、比較的考察の見通しが良くなる。この着想に基づき、意味論的な構造を研究した。まず、categoricalな概念や、構造上の性質を導入し、従来の意味論との対応を調べた。また、通常の層における自然変換や圏における関手を真理値関手を持つクリプキ層意味論の立場から解釈することを考え、基本的な結果を得た。これによって、通常の層の意味での自然変換が、p-morphismという意味論上の概念と、ほとんど対応することがわかった。そこから意味論の幾つかの自然な結果が導かれた。それを応用して、様相論理、非古典述語論理、特に中間述語論理などを研究した。
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