研究概要 |
破壊力学における重要なパラメータである応力拡大係数Kは,亀裂をもつ弾性体を記述する偏微分境界問題の解での特異項の係数として数学的に特徴付けられる。応力拡大係数は,ヤング率など通常の物体強度パラメータと異なり物体の形状Ω,亀裂の形状Σ,負荷fなどに依存する汎関数K(Ω,Σ,f)となっている。応力拡大係数は,解析解,数値計算,実験などで個別的に求められており,パラメータ{Ω,Σ,f}への依存性を統一的に研究したものは少ない。本研究では,物体形状Ωを微小に変形させたときの,応力拡大係数の感度解析を表す式を数学的に導出した。導出は,「双対特異法による応力拡大係数の表現」と,筆者が考案した「一般J積分法による解析」を用いた。結果は,亀裂をもつ弾性体の解uと双対特異解の正則部分ζによって「δR(u,ζ)+境界積分」の形で表せる。ここで,Rは一般J積分の面積分の項である。一般J積分のR表現は,弱解でも成り立つが,解析的性質は捕らえにくい。「一般J積分の基本性質」を使ってP表現(線積分)に変換することで,解析的性質を明確にできる。数値計算としては,フランスのPironneau Olivier教授らが作成したFreeFemに面積分,線積分,Cut-off関数とその偏微分を追加したものを使った。FreeFemは,有限要素解析言語を搭載し,三角形自動メッシュ生成,1次要素近似を行うプログラムであり,ソースコード(C++)が公開されている。有限要素解析言語により,物体形状が容易に定義できるため,本研究に適していると考えている。
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