地上からの天体観測においては、地球大気により、天体の短時間露光像はスペックル状となる。しかし、このようなスペックル像には望遠鏡の回折限界までの高空間分解能情報が含まれている。スペックル干渉法は、補償光学と異なり、簡便なハードウエアで天体の高空間分解能像を得る方法である。ここで、大きく異なる波長でスペックルパターンに相関があれば、一方の波長で点源と見なせる天体または参照星のスペックルパターンを利用して、他波長での天体像を高空間分解能で像再生できることになる。 本研究では、大きく異なる波長間でのスペックルパターンの相関性を調べ、2波長スペックル法による高空間分解能撮像法を確立することを目的とした。このために、国立天文台岡山天体物理観測所の90cmと188cm望遠鏡に2色スペックルカメラを取り付けてカペラやベガの観測を行った。短波長側を400nmあるいは450nmとし、長波長側を800nmとした。これらは、可視域のほぼ両端の波長であり、波長比は約2である。 短波長側および長波長側のスペックルに対して、Shift-and-Add操作により像再生を行い、もう一方の波長での再生像と比較した。その結果、短波長側を参照する場合でも長波長側を参照する場合でも、重心位置で重ね合わせて得られる為長時間露光像よりも高空間分解能の像が得られることが明らかになった。このことは、異なる波長でのスペックルパターンを利用して、天体の高空間分解能撮像が可能であることを示している。本方法による可視-近赤外観測は今後の課題である。
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