研究概要 |
本年度の研究実績は以下のごとくである: 1.赤色矮星及び褐色矮星大気におけるダスト形成過程を我々の大気モデルと最近の観測結果を比較することにより明らかにした。即ち、晩期M型矮星及び遷移天体におけるダストは限界半径よりも小さく、ダストはできても成長せず、ダストとガスは詳細平衡にある。従って、氣相/液相/固相間の分離は起こらずこれらが均質に混合した状態にある。より低温(正真正銘の褐色矮星GL229B)では、ダストはついに限界半径を越えて成長を始め氣相/液相/固相間の分離が起きる。ここではシリケートなども多量にできるがダスト雲の形で存在し,その間隙から流出したメタンなどの揮発性ガスが大気上層を満たすため,ダストは見かけ上観測されない。 2.炭素矮星の大気構造と赤外スペクトル従来,炭素星は進化の進んだ高光度の星に限られると考えられていたが,最近高銀緯における炭素星の探査が行われた結果、ハロ-の炭素星の中には固有運動の大きく矮星と考えられる炭素星が多数発見された。これらの星の観測特性を解明するためには、その大気構造を明らかにする必要がある。その一環として炭素過多の高圧大気における分子及びダストの形成と、それに基ずく吸収源の検討を行い、輻射-対流平衡にある大気モデルを様々の金属量について計算した。有効温度が3,000K以下ではダスト形成の熱力学的条件は十分に満たされるが、グラファイトなどのダストが形成されると温度が急激に上昇するため、輻射平衡の条件下ではダストは星のごく表面で少量できるに過ぎない。しかし、この少量のダストによっても、大気構造及びスペクトルなどは大きく影響される。 3.岡山天体物理観測所のOASISにより赤色矮星、炭素矮星の赤外スペクトルの観測を行い、また、ISOによる赤色矮星の観測も一部行われ、そのデータ整約を行った。これらの本格的解析は来年度に行う。
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