太陽フレア-時に解放される磁気エネルギーがどのような機構でプラズマの加熱や、高エネルギー粒子加速に変換されるかは、宇宙プラズマ物理学の重要な未解決の問題である。 "ようこう'科学衛星で発見された新しいフレア(増田フレアと呼ばれる)は、軟X線で光るループ構造と、そのループ頂上付近の上空に明らかに、ループと異なる領域で、硬x線源をもつフレアである。このフレアは、増田等により電流ループとプラズモイド(プラズマ雲)の衝突によって発生したと考えるモデルが提案された。 我々は、このフレアで観測されているX線源を説明するために3次元元MHDコードと3次元粒子コードを用いてプラズマ雲と電流ループの衝突過程を調べ、プラズマ加熱機構、及、高ネルギー電子の加速機構を明らかにした。プラズマ雲と電流ループの衝突で電子の温度が磁場に垂直方向に断熱的に加熱される。このため磁場に垂直方向の電子温度が磁場に平行方向の電子温度より大きくなり電子温度の異方性が発生する。この電子温度異方性によりホイスラ-波が励起される過程を粒子コードを用いて明らかにした。温度異方性が大きくなると大振幅の(背景磁場の約1%)ホイスラ-波が励起され、この波による電子の高エネルギー粒子加速の可能性が明らかになった。 又、3次元MHDコードを用いたシミュレーションにより電流ループのX型合体過程が調べられ、1993年8月2日に発生したX型太陽フレアとの比較がなされ、温度上昇などをシミュレーションによる結果でよく説明できることが明らかにされた。 又、最近の太陽フレア観測と理論シミュレーションの結果の総合報告をSpace Science Reviewsに発表した。また、太陽彩層のような弱電離プラズマでの磁気再結合では中性粒子に再結合する過程が重要になり、この効果がMHDシミュレーションによって調べられ、磁気再結合が増大しプラズマ加熱に大きな影響を与えることが示された。
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