本研究の目的は、銀河系内に散らばる「孤立」した赤外線点源の正体を探ることである。これらの点源は、1984年に打ち上げられた赤外線天文衛星(IRAS、米国)によって検出された赤外線点源のうち、遠赤外領域(25〜60μm)の特徴から、星間塵に取り巻かれた原始星であることが示唆される天体である。我々が平成5年以前に行った一酸化炭素分子輝線(^<13>COの回転遷移J=1-0:名古屋大学4m鏡による)を用いた白鳥座領域における広域分子分光観測により、これらの赤外線点源は、現在までに研究されている他の原始星とは大きく異なる特徴を持つことが明らかとなった。すなわち、通常の原始星にはその母体である高密度のガス塊が付随しているのに対し、これらの赤外線点源の周囲にはガスがほとんど存在しないのである。原始星と考えられる赤外線点源が、分子雲から「孤立」した場所に数多く分布していることは、今まで全く知られていなかった。 本研究では、孤立した赤外線点源の起源を探究するために、可視光からミリ波にかけての広い波長範囲にわたる観測およびデータベースの検索を行った。まず野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡を用いたCO(J=1-0)分子輝線による高感度・高角分解能分光観測を、約250個の孤立赤外線点源について行った。この観測により、いくつかの孤立点源は、以前の^<13>CO観測では検出できなかったコンパクトな分子雲に付随する原始星であることが判明した。また、COのエミッションが検出されなかったものについて赤外線天文台・ISOを用いた観測を行い、100〜200μmでのスペクトルを取得した。さらに、可視光のイメージを調べるために、デジタルスカイサーベイ(パロマ・DSS)のデータベースを調べた。現在、上記の作業で得られた一連のデータをまとめているところである。データ処理の完了をまって、研究結果の公表を行う予定である。
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