中性子量の内部で中性子は超流動の状態にある。特にインナークラスト中の超流体は原子核や電子といった通常物質(クラスト)との相互作用が弱く、クラストよりも速く回転している。ある臨界温度以上では超流体とクラストとの相互作用(摩擦)は安定であるが、臨界温度以下になると超流体とクラストとのカップリングは摩擦不安定になることがすでにわかっている。この摩擦不安定の原因は超流体とクラストとの相互作用が温度に敏感に依存しているためである。グリッチや摩擦不安定性で超流体中に生じた熱が超流体-クラスト相互作用を介し、クラストの回転にいかなる影響をおよぼすかを調べることが本研究の目的である。 今まで行なってきた初期的な見積りでは、中性子星内部を等温と仮定して計算を行なってきた。しかし、インナークラスト中で生じた熱の影響を正しく知るためには、この熱が中性子星内部をいかに拡散していくかを考慮する必要がある.本年度は熱の拡散を取り入れた計算コードの開発にあたり、コードをほぼ完成させることができた。さらにこの計算コードをグリッチに応用し、次のような結果を得ている。 ・グリッジで解放された熱による表面温度の上昇は10%以下である。 ・BPSモデル、UUモデル、PSモデルと状態方程式が硬くなるにつれてクラスト層が厚くなるため、表面温度の上昇が小さくなる。 ・exotic coolingを採用するとニュートリノ損失が効くため、表面温度の上昇が小さくなる。 今後は、超流体とクラストの回転を扱かう計算コードを開発し、本年度開発したコードとドッキングさせる予定である。
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