平成5年3月にパロマ-山天文台で発見されたシューメーカー・レビー第9彗星(1993e)が平成6年7月に木星へ衝突した。彗星そのものは発見当初から20個ほどの核に分裂しており、それぞれの大きさは約1km以上の大型天体で、予想される衝突速度は毎秒60km、ひとつの核の衝突エネルギーは10^<29>エルグ、広島型原爆の約1億倍に相当する。このような大規模な衝突現象は惑星大気に大きな変動を与え、実際に多くの異変が観測された。国立天文台岡山天体物理観測所188cm望遠鏡では近赤外線カメラ「OASIS」により、衝突直後の発光、きのこ雲からの熱放射、それに続いて生成した塵雲からの散乱光を観測することに成功した。 本研究では、衝突時に国立天文台岡山天体物理観測所188cm望遠鏡で得られた数千枚に及ぶ画像データを、本研究費により購入したパーソナルコンピューターによって画像処理を行った。画像合成により、特に、衝突地点と磁力線でつながっている北半球の共約点付近について詳しくシグナルのレベルを上げ、いままで気がつかなかったようなかすかな発光を探したが、発見できなかった。 もうひとつの処理として、近赤外線で映っている極地域の発光領域をモデルによって取り除き、正確な光度変化を導いた。この解析から近赤外線での発光現象の物理過程を解明した。核Kの観測データには3つの大きな発光が観測されたが、最初のものが衝突時の爆発現象が散乱されたもの、2番目が噴出したきのこ雲からの熱輻射による発光、3番目の発光きのこ雲中での塵の凝縮生成によるものと、きのこ雲物質の落下による二酸化炭素分子からの発光であると推定した。
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