原始惑星系円盤内における分子組成の化学的状態及び進化過程を理論的に求めることが当申請研究の目的である。達成目標は以下のように設定した。 1.原始惑星系円盤の現象論的モデルを使用して、分子組成の化学進化を反応ネットワークを解くことで求める。この際、ダストへの分子の吸着及びダストからの蒸発を考慮に入れる。電波観測のデータとの比較によって、原始惑星系円盤の物理量及びモデルの妥当性をも決定する。 2.同じ分子に於いても、同位体で構成された分子の組成比は、化学反応の反応率やダストへの吸着や蒸発過程が原子量に依存する場合があるので異なる。従って同位体で構成された分子量の比を時間の関数として理論的に求め、より詳細な円盤の物理量と年齢を探る。 今年度は、原始惑星系円盤の中でも比較的高密度の領域での科学進化過程を調べた。その結果、ダストに氷着する氷としは、酸化的分子化合物だけでなく還元的分子化合物も含まれることが得られた。この結果は彗星から噴出される組成との比較で興味深い。研究成果は、論文としてまとめて、現在Astrophysical Journalへ投稿中である。
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