研究概要 |
1.D=0次元の弦場の理論におけるSD方程式は長さlをもつ閉弦に対する外源をJ(l)とすると、lT(l)Z[J]=(-3δ″(l)+3/4tδ(l))Z[J]という形にまとめられる。ここでZ[J]は弦の振幅の母関数、tは宇宙定数、T(l)はVirasoro代数をみたすJ(l)についての次の汎関数微分演算子である。 T(l)=∫^l_0dl′δ/δJ(l-l′)δ/δJ(l′)+g∫^∞_0dl′l′J(l′)δ/δ(l+l′) この方程式を行列模型から導かれるVirasoro条件と関連づけるためには、その両辺をlで割らねばならない。この時新しくあらわれるδ(l)に比例する項の係数が、Z[J]を使って書き表せることを示し,その形を決定した。 2.以前筆者を含む共同研究(池原・他)で提案した、D=1/2次元の弦場の理論(2次元ランダム面上にIsingスピンがのっている理論)におけるSD方程式が積分可能性条件をみたすことを示し、汎関数微分演算子が満たす代数を求めた。(鈴木俊哉氏との共同研究。雑誌に発表済み。) 3.D=1/2次元の弦理論において、弦場に対する新しいSD方程式(ループ方程式)を導き、これをもとに弦場の理論を作った。この新しいSD方程式は、次の特徴をもつ。 (1)弦場としては弦上のIsingスピンがすべて上向きであるものとすべて下向きであるものの2種類を含む。 (2)弦場に対するSD方程式をスケーリング演算子のグリーン関数に対する方程式に書き換えたとき、これが行列模型において得られたW_3条件と一致する。 以前筆者たちが提案した弦場の理論におけるSD方程式は、行列模型において得られたW_3条件に等価であることは示せたが、その積分可能性条件とW_3代数との関係は明瞭ではなかった。今回得られた新しいSD方程式の積分可能性条件は、W_3代数そのものになっている。現在この結果を論文としてまとめている最中である。(鈴木俊哉氏との共同研究)今後は、今回得られた弦場の理論を用いて物質場がのっている場合のランダム面のフラクタルな構造を調べる予定である。
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