研究概要 |
平成7年度には、次のような研究を行った。 1.静止K^-反応からのハイパー破片生成とπ粒子スペクトルの研究 ハイパー破片生成については、論文が出版に至った。(Y.Nara,A.Ohnishi and T.Harada,Phys.Lett.B346(1995),217-222.)また、この時のπ粒子のエネルギースペクトルについては、終状態相互作用をとりいれて計算を行い、その結果は国際会議にて報告された。これらの結果は、標的核によりハイパー破片の生成機構が大きく異なることを示しており、計算の後に行われた実験により、その正しさが認識されるに至っている。 2.K^-反応での軽いΣハイパー核生成とチヤンネル結合効果 ^<12>C,^9Be,^4Heを標的核にしたK^-入射反応でのΣハイパー核生成について、殻模型、及びクラスター模型を基盤とした研究を行った。これらの結果は^9Beを標的核としたときにクラスター的相関が重要であることを示唆しており、再び^4_ΣHeの存在の重要性を示すものである。また、^4Heを標的核としたときに中間状態で重要となる^3_ΣHについてその構造をチヤンネル結合効果を中心にして調べた。 3.(K^-,K^+)反応におけるK^+粒子の運動量分布 この反応は本研究の目的であるダブル・ハイパー核生成の“初期条件"を与える反応である。これまでの研究では、K^+粒子の低運動量領域でのスペクトルを説明することが不可能であったが、我々は中間状態でπ,ρ,ηなどが伝播することを考慮に入れ、少なくとも定性的にはこのスペクトルを説明できることを示した。この結果の一部は上記の国際会議で報告し、大きな反響を得た。また、上記の結果はシミュレーションの方法を用いて得られた結果であるが、衝撃(Impulse)近似の結果とも無矛盾であることがわかった。現在、投稿論文を準備中である。 4.(K^-,K^+)反応からの2重ストレンジ核(ダブル・ハイパー核)生成 これは本研究計画の中心的な課題であり、(3)の成果をもとにして様々な過程におけるダブル・ハイパー核生成、シングル・ハイパー核生成について、現在研究が進行中である。
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