銀河団による重力レンズ現象として遠方の銀河の像が長く引き伸ばされて明るく見える巨大ルミナスアークが知られている。しかし銀河団の中でアークをもつものがどの程度存在するかについては、理論の予言と観測値には大きな違いがあった。我々は最近の遠方宇宙での銀河観測の結果に基づいて巨大ルミナスアークの期待される数を計算した。得られた値は従来の値を大幅に上まるものであるが、まだ観測地には足りない。しかし銀河団の質量分布を現実のものにより近づけることや、宇宙定数の存在などの宇宙論のパラメータを変えることで観測との一致が不可能ではないという感触を得た。 同じく銀河団による重力レンズ現象でアークほどには引き伸ばされないが増光は激しく受ける現象があることを指摘した。またこの現象を用いて宇宙のパラメータ、特に宇宙定数に制限を与えることができることを示した。この現象の例としてcB58と呼ばれる天体を解析して実際に宇宙定数についての制限を与えた。 研究代表者と研究分担者によって局所的に非一様な時空を構成する方法としてアインシュタイン方程式の平均化する違った方法が提案された。一方は密度揺らぎが非線形で宇宙の小さな領域、他方は揺らぎ余り大きくないが任意の大きさの揺らぎを扱うことができる。どちらの方法を用いても非一様性が宇宙に与える影響は小さいことを示した。また従来、現実的な非一様な宇宙では重力レンズによって天体はある平均的な増光を受けると考えられていたが、上述の非一様宇宙モデルに基づいた解析により平均的には増光を受けないことを示した。
|